チャプター 72

あからさまに嘲りを込めた私の口調を察したのだろう、イザベルの顔は嵐雲みたいに陰った。

あんなふうにみじめそうな顔をしているのを見ていると、理由もなく胸がすうっと満たされる。

「なに、その目。泣きたいの?」私はイザベルに微笑んだ。「ガブリエルはいまお手洗いよ。涙の芝居を打つなら、せめて戻ってくるまで待ちなさい。じゃないと観客がいなくて、頑張りが全部ムダになるでしょう?」

イザベルは私の言葉を本気で受け取ったらしい。だからガブリエルがお手洗いから戻ってきた瞬間を狙いすましたように――涙がつうっと頬を伝い始めた。

私はくすりと笑った。「本当に女優の素質があるわね」

「どうした?」イザベルが...

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